コンサルタントに興味があるけど、「どんな種類のコンサルタントがあるのか?」、「各コンサルタントで年収・キャリアの広がりは?」、「自分の適しているコンサルタント職はどれか?」等、疑問に持たれている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、コンサルティング企業で働いた経験を踏まえて、コンサルタント職の違いを分かりやすく説明いたします。 この記事は「コンサルタント業界に興味を持っているが、自分に適するコンサルがわからない方」、「自身のキャリアとしてコンサルタントに就きたいが、退職後のキャリアイメージをつけたい方」に読んでいただければ幸いです。
各コンサルタントの仕事内容と残業時間
各コンサルタントの仕事内容と残業時間を解説してきます。
戦略コンサルタント
戦略コンサルタントは、クライアントのビジネス課題を分析し、最適な戦略を提案・実行する専門家です。データ分析、課題特定、戦略策定、チーム連携、実行支援などを通じて、クライアントのビジネス成功に貢献します。下記に業務の流れを説明しています。
1. クライアントの課題を理解する
最初のステップは、クライアントのビジネスに潜り込むこと。現地調査、データ収集、面談などを通じて、クライアントの課題や目標を徹底的に理解します。これがプロジェクトの土台づくりです。
2. データ分析と課題の特定
次に、大量のデータを分析し、クライアントのビジネスに潜む潜在的な課題を特定します。数字と向き合い、トレンドやパターンを読み解ることが、戦略策定のカギです。
3. 戦略の策定と提案
データをもとにして、独自の戦略を練り上げます。これはクライアントのビジネスに最適なソリューションを見つけ出すプロセス。そして、クライアントに対してその戦略を提案し、説明することが求められます。
4. チームとの連携
戦略が決まったら、それをクライアントに届けるまでが勝負。ここで重要なのが、専門家チームとの緊密な連携。プロジェクトマネージャー、アナリスト、専門家たちが一丸となってクライアントに価値を提供します。
5. 実行支援
戦略が採用されると、その実行フェーズが始まります。コンサルタントはクライアントをサポートし、実際のビジネスに戦略を組み込む手助けをします。時には予期せぬ問題にも臨機応変に対応しながら、最終的な成功を迎えることが目標です。
これらの業務を通じて、戦略コンサルタントはクライアントのビジネスパフォーマンス向上や課題解決に寄与します。
【平均残業時間】40~80時間
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、システム導入関連のプロジェクトにて企業やクライアントに対してコンサルティングを提供する専門家です。以下は、ITコンサルタントの主な業務内容です:
1. ビジネスの課題に挑む(要件定義とニーズの把握)
ITコンサルタントの最初のステップは、クライアントのビジネスに深く飛び込むこと。何が課題で、どんな目標を掲げているのかを理解することが鍵です。これが、プロジェクトのスタート地点となります。
2. テクノロジーの適用で解決策を提案(システム設計とアーキテクチャの策定)
ここで、ITコンサルタントの真価が問われます。データ分析、システム設計、セキュリティ対策などを組み合わせ、クライアントにぴったりなテクノロジーソリューションを提案します。
3. イノベーションの提案(システム開発の助言とサポート)
ITコンサルタントは常に最新のテクノロジートレンドに敏感。新しい技術やイノベーションを積極的に取り入れ、クライアントのビジネスに革新をもたらす提案を行います。
4. システム統合と導入
新しいシステムやソリューションを既存の環境に統合し、効果的かつスムーズに導入されるように支援します。
5. セキュリティコンサルティング
システムやアプリケーションのセキュリティに関するアドバイスや対策を提供し、セキュリティポリシーを策定します。
6. 業務プロセスの最適化
クライアントの業務プロセスを評価し、最適化や効率化の提案を行います。これには業務プロセスの自動化も含まれます。
7. トレーニングとサポート
導入されたシステムや新しいテクノロジーのトレーニングを提供し、クライアントのチームがスムーズに運用できるようサポートします。
8. プロジェクトマネジメント
ITプロジェクトの進捗管理やリソースの調整、予算の管理など、プロジェクトマネジメントの役割も果たります。
【主な役割】
・課題の分析、戦略の策定、テクノロジーの戦略的活用など、戦略的なコンサルティングを提供
・業務プロセスの最適化やデジタルトランスフォーメーションに関するアドバイス
【活動範囲】
・業務全体に対する影響を考慮し、ITを戦略的な視点で提案
・クライアントのビジョンや目標に基づき、テクノロジーを活用してビジネス価値を最大化する戦略を提供
【スキルセット】
・業務理解、戦略策定、プロジェクトマネジメント、コミュニケーションスキル
・クライアントの組織全体を俯瞰し、ビジネス目標に対して最適なIT戦略を提案するスキル
【平均残業時間】40時間
SIer
SIer(システムインテグレータ)は、情報技術(IT)の分野で企業や組織に対してシステムを提供・統合する専門家です。下記にてSIerの仕事内容をわかりやすく説明します。
1. クライアントの要件分析:
- クライアントとのコミュニケーションを通じて、ビジネス要件や課題を理解します。
- システムに求められる機能や性能などの要件を詳細に分析します。
2. システム設計:
- クライアントの要件に基づいて、システムのアーキテクチャや仕様を設計します。
- ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどを組み合わせて、統合されたシステムの設計を行います。
3. システム開発:
- プログラミングやコーディングを通じて、システムの開発を行います。
- カスタムソフトウェアや既存のソリューションを組み込んで、クライアントのニーズに応じたシステムを構築します。
4. インテグレーションとテスト:
- 開発したシステムやソリューションをクライアントの既存環境に統合します。
- 統合テストを実施して、システムが要件を満たしていることを確認します。
5. デプロイメント(導入):
- 開発・テストが完了したシステムをクライアントの運用環境に展開し、正常に稼働するようにします。
- ユーザートレーニングやサポート体制の構築も行います。
6. システムの保守と運用:
- 納入後もシステムの保守・運用を担当し、トラブルシューティングやアップデートなどを実施します。
- クライアントの要望や環境の変化に応じて、システムを継続的に改善します。
7. プロジェクトマネジメント:
- プロジェクト全体を統括し、予算、スケジュール、品質を管理します。
- チームとの協力やクライアントとのコミュニケーションを円滑に行い、プロジェクトを成功に導きます。
【主な役割】
・システム開発・統合・保守など、具体的なITプロジェクトの実行を担当
・ハードウェアやソフトウェアを組み合わせ、クライアントの要件に基づいたシステムを構築
【活動範囲】
・技術的な実装に焦点を当て、開発や統合プロセスに従事
・プロジェクトの要件に基づいて、システムの開発から運用までの一連の工程を担当
【スキルセット】
・プログラミングやシステム設計、統合技術などのスキル
・プロジェクトマネジメントや品質管理
ITコンサルタントとの違いは・・・?
簡潔に言えば、SIerは具体的なITプロジェクトの実行を担当する一方で、ITコンサルタントはビジネスにおけるテクノロジー活用の戦略的な側面に焦点を当てます。ただし、プロジェクトが進むにつれて、両者の役割は交わり、協力することが一般的です。
【平均残業時間】20~30時間
シンクタンク
シンクタンク(Think Tank)は、研究や政策提言などを行う非営利組織や機関のことを指します。彼らの仕事は主に研究と政策提案に焦点を当てています。以下に、シンクタンクの仕事内容をわかりやすく説明します。
- 研究と分析:
- 最新の社会、経済、科学、技術などのトピックに関する研究を行います。
- データや統計を収集・分析し、トレンドや問題点を把握します。
- 政策提案:
- 研究結果をもとに、特定の政策領域において提案を行います。
- 提案は具体的で実現可能な形で、政府や企業、社会に向けて行われます。
- 報告書の作成:
- 研究結果や提案をまとめ、報告書や論文として公表します。
- これにより、他の研究者や政策メーカー、一般の人々に情報を提供します。
- イベントやセミナーの開催:
- 研究成果を広く社会に発信するため、セミナーやシンポジウム、会議などのイベントを開催します。
- 専門家や関係者との議論や情報交換の場を提供します。
- 教育活動:
- 専門的な知識を広めるために、研究者が大学や研究機関で講義を行ったり、研究生を指導することがあります。
- ロビー活動:
- 特定の政策や立場を支持するために、政府や企業との対話や説得活動を行います。
- 一般市民に対しても、情報発信を通じて意識を喚起することがあります。
- 国際的な協力:
- 国際的な問題に取り組み、他国のシンクタンクや国際機関と協力して研究を進めることがあります。
- グローバルな視点からの提言や研究も行います。
シンクタンクは中立性や客観性が求められ、その研究結果が多岐にわたる分野で社会や政策に影響を与えることがあります。
【平均残業時間】50時間
専門コンサル(M&A)
M&Aコンサルタント(Mergers and Acquisitions Consultant)は、企業の合併や買収に関与し、戦略的な助言や支援を提供する専門家です。以下に、M&Aコンサルタントの仕事内容をわかりやすく説明します。
- 企業評価:
- 合併や買収の対象となる企業を評価し、その価値を明らかにします。
- 財務諸表やビジネスモデルの分析を通じて、適正な企業価値を算定します。
- 市場調査と分析:
- 対象企業が位置する市場や業界について調査し、競合状況や成長の可能性を分析します。
- トレンドやリスクを把握し、クライアントに最適な提案を行います。
- 戦略的アドバイス:
- クライアントに対して、合併や買収の戦略的なアドバイスを提供します。
- 企業の戦略目標や成長計画に基づいて、最適なM&A戦略を立案します。
- デューディリジェンス:
- M&Aのプロセスにおいて、対象企業の詳細なデューディリジェンス(専門的な調査)を実施します。
- 法的、財務、税務、業務などさまざまな側面からリスクや機会を評価します。
- 交渉サポート:
- 交渉フェーズでは、クライアントの利益を最大化するようにサポートします。
- 価格交渉や契約条件の調整など、交渉において戦略的なアドバイスを提供します。
- 統合計画の策定:
- M&Aが完了した場合、対象企業をクライアントの組織に統合する計画を策定します。
- プロセスの円滑な進行や効率的な統合を目指します。
- リスク管理:
- 合併や買収に伴うリスクを把握し、クライアントに対してリスク管理の提案を行います。
- 法的なコンプライアンスや労務関連のリスクなどに焦点を当てます。
- クライアントの期待管理:
- クライアントとのコミュニケーションを通じて期待を確認し、進捗や成果について報告します。
- プロジェクト全体の透明性を確保し、クライアントの信頼を築きます。
M&Aコンサルタントは、高度な戦略的思考とビジネス洞察力を持ち、複雑な交渉や統合プロセスにおいてクライアントを効果的にサポートします。
【平均残業時間】40~80時間
コンサルタントが長時間労働になる理由
クライアントの期待値が高い
コンサルティング企業に依頼するケースはクライアント企業が抱える人材では進めることができない難しいプロジェクトであることが殆どであるため、コンサルタントが受け取るコンサルフィーは高い傾向にあります。
その分クライアントからの期待値が高く、調査・分析・プロジェクト管理などの全てのサービスの提供において高い品質が求められるため、長時間労働が必要となることが多いです。
週一の定例報告会がある
毎週クライアントとの定例会議が発生するため、プロジェクト期間中は基本的に忙しくなることが多いです。
特に、プロジェクトが安定していないプロジェクト初期・終盤フェーズは最も多忙となるため、有休をとることは難しく、深夜残業を強いられることもあります。※平均残業時間は35時間程度(2時間/日 程度)
※業界ごとの平均残業時間
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急な依頼への対応
週一の定例会に加えて、役員向けの報告会や外部向けの報告会が発生する場合があるため、急な依頼に対して迅速に対応する必要があります。急に忙しくなる可能性もあるため、平日にプライベートの用事を立てる際は遅れる可能性があることを前提に予定を組む必要があります。
コンサルタントになるメリット
つづいては経営コンサルタントになるメリットを挙げていきます。
専門的スキルの向上(IT・戦略・M&A)
年次の高いクライアントを相手に価値を提供する必要があるため、常に勉強が必要となるが、その積み重ねにより、業界の知識、専門知識(M&A、戦略、IT等)を身に着けることができます。
これらの知識は自身の市場価値を上げることができるため、年収アップにもつながりますし、専門知識が増えることにより活躍の場を広げることが可能になります。
【参考】専門分野と転職先の例
- M&A ➡ 投資銀行
- 戦略 ➡ 事業会社の経営企画・事業企画
- IT ➡ ITコンサル会社、GAFAM等
ネットワーキングの機会が豊富でキャリアが広がる
コンサルティング業界はクライアントとして事業会社、官公庁の方と接点を持つだけでなく、1次情報の収集の観点から、国内外の学術団体・公的機関、同僚と幅広くコミュニケーションを取る機会が多くあります。
ネットワークが広がることにより、普通に生活している中では出会わない方と出会えるチャンスが増えるため、キャリア、知識の幅が広がり人生がより豊かになると考えています。
私の周りでも同僚と新しい事業を始めたり、クライアントからヘッドハンティングされたりとキャリアは無数に広がっているように思います。
長期での有給休暇がとりやすい
経営コンサルティング企業は事業会社と異なり、プロジェクト単位でメンバーを構成して、一定のプロジェクト期間内で仕事を集中的に行う業界のため、プロジェクトの間はまとまった休みがとりづらい一方で、プロジェクト期間外であれば1~2週間の休みを取ることは容易です。
多くの人が、この長期休みを利用して海外旅行や家族と過ごす人が多い傾向にあります。
実際に私もプロジェクトの間に1週間以上の有休を取得して、海外旅行をしています。
転勤もなく、好きな場所で働くことが可能(テレワークが主流)
経営コンサルティングの業務の100%はパソコンを用いた作業であるため、ネット環境さえあれば自宅、旅先、帰省先問わず仕事をすることが可能です。
実際、私が勤める企業でも多くの人がテレワークを利用しており、東京本社勤務であっても働く場所は名古屋市、金沢市、タイのバンコク等家庭の都合に合わせた働き方が可能なことが多いです。
私はテレワークメインで仕事をしているため、本社までの距離は自宅から1時間程度と遠いですが全く問題ありません。
むしろ家賃を抑えることができるので節約にもつながります。
仕事が繁忙期でなければ、島や温泉旅館等の泊まりながら、軽く仕事をしつつ、退勤後は温泉や海のアクティビティを満喫するライフを過ごしています。
また、製造業、商社等とは異なり、転勤が存在しないため、会社に振り回されることなく、ご自身の住みたい街で、ご自身・パートナー・家族に合わせた人生設計を立てることが可能です。
好きな時間に働くことが可能(フレックスタイム)
テレワークを中心とした業務のため、家庭の都合や自身の体調に合わせて仕事をすることができるので、お昼休憩や時間給を活用して、休日に行けない又は混雑する役所や病院などに行けるのが最大のメリットだと思っています。
特に私は子供と過ごす時間を大事にしているので、朝夕方の送り迎え、子供との夜ご飯の間は仕事をせずに、子供が寝た後に残った仕事をするようにしています。
参考までに2児の息子を持つ経営コンサルタントの1日のスケジュールを共有します。
7:00~ | 起床・朝食 |
8:00~ | 子供の送迎 |
8:30~17:30 | 仕事 |
17:30~ | 子供の送迎 |
18:00~21:00 | 子供との夕食・一家団欒 |
21:00~23:00 | 残りの仕事 or 自由時間 |
23:00~ | 就寝 |
まとめ
今回は「コンサルティング企業の働き方」について紹介しました。コンサルの労働時間はコンサル企業ごと、プロジェクトごと、プロジェクトのフェーズによって忙しさは大きく変わってきますが、近年の働き方改革・テレワークの普及により残業時間は30~40時間程度に抑えられ、長期的に働くことができる職場になっております。これを機にぜひ皆様には経営コンサルタントに興味も持っていただければ嬉しいです。ただ、コンサルタントは非常に人気な業界であるため、内定獲得には綿密な準備が必要となる可能性が高いです。
以下の記事では「経営コンサルティング企業の内定獲得の対策」について、解説しているので、こちらの記事も是非併せて読んでみてください。